北山丸太を使って木人を作ってみる!
木人、英語ではWooden Dammy、直訳すると木の人形。
中国拳法でサンドバック代わりに打撃稽古をするのに使う道具です。
これは日本ではあまり見かけないのですが、
ブルースリーやジャッキーチェンで有名になりました。
立ち木に三本、手をイメージする枝が飛び出していると考えて頂けるとよい。
日本では沖縄空手で小手を鍛えるのにもつかわれますが、
実際には、手数を出してコンビネーションや掛手(掴み)の練習に使われます。
空手の型をやっていると多くの掴み技が出てきます。
今、ほとんどの競技で掴み技は禁止されていますが、
もともと沖縄空手では掴む、または掴んで崩すというのが多用されています。
型の分解稽古をするのに非常に便利な道具がこの木人(拳)です。
サンドバックと違い、打とうとしてもこの手が3本飛び出しているので、
それをよけながら次の技を出す必要があり、
片手で相手の掴み、片手で攻撃をする。
また、片手で受けると同時に反対の手で突くという事を
高スピードで練習をしていきます。
実際、台湾から輸入して通販で中国製木人を買うことも出来ますが、
私にはデザイン的にこの中国趣味が合わないので、
もっとシンプルに素材のよさだけを使って木人を作ってみました。
使う材料は、日本の数寄屋建築の代表素材である北山丸太。
これを使って、日本の空手道場にあっても違和感のない、
素材感だけのあるミニマムデザインの木人を作ります。
◆ ◆ ◆
北山丸太は、京都の北山杉を使って作り出された磨き丸太のことです。
もともと、日本家屋の床の間の床柱などに使われてきた高価な材料です。
しかし、今日の住宅のプレハブ化や洋室化により
この北山丸太は使われなくなってきています。
特別な化粧柱として使うために、わざわざ山で細くして作られているこの木は、
遠目に見ると大変綺麗な山を形成し、京都の環境資源の一つとなっています。
北山杉と言われる木は、この北山丸太をとるための木です。
東山魁夷は、この北山杉の群を京都の美の一つとして絵に残しています。
しかし、北山丸太が使われなくなった結果、
北山杉は山で放置されていることも少なくありません。
その為、この問題に対処するために、北山丸太の利用促進を
私も含め京都の建築士や学者、また林家や行政の人々がいろいろとやってきました。
下の写真は、北山丸太を使ったソファーです。(コクヨ:イマトコ)
先ずは、木人の設計をするところから開始です。
木人は、上段(顔の位置)から手が2本出ていて、
中段(腹の位置)から手が1本、それから膝にみたてた足が1本出ています。
それらを北山丸太を利用することを前提に設計します。
そして、作った木人が下記のもので、
北山丸太のキメの細かさが際立っていて、
通販のように毒々しいクリアー塗装をしなくても、
自然のままでこのような肌合いをしています。
これが北山丸太のよさです。
もともと、北山丸太はこの表面の綺麗な肌合いを出すために、
菩提の滝にあるキメの細かい土を使って丁寧に磨くことから、
磨き丸太と言われ、この京都北山地区の特産物となってきました。
尚、材は、北山丸太組合さんから提供をして頂きました。
実際に木人をどのように使うかというと、下記の動画のように
木人を対戦相手と思って、打撃戦を繰り広げます。
中国では、木人拳だけの型があったり、やり方があったりしますが、
ここは空手家らしく、みようみまねで即興でやってみます。
この木人は、Kyoto KARATE Cafe の中に置いてありますので、
興味のある方は、稽古して頂いても結構です。
また、どうしても欲しいという方は、
上記の図面を見て大工さんに作ってもらったらよいと思います。
まあ、木人は別として、
さまざまな場面で、是非、この北山丸太を使ってください。